「直系=父系」に出典はあるのか?
私は気になることは調べて見たい性格である。某掲示板でtapirさんと本音の時代さんが「直系」と「父系」が同義かを巡って議論していた。
tapirさんはこう言われる。
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次に本音の時代さんはこう言われる。
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私が気になったのは、そもそも2の「直系=父系」と言う用例が「古典」に存在するのか、ということである。
というのも、tapirさんがリンクを貼ったコトバンクの辞書に載っているのは「古典」ではなく「近代」の、それも共産主義者による用例だからだ。
精選版 日本国語大辞典「直系」の解説
ちょっ‐けい チョク‥【直系】〘名〙
① 祖父・親・子・孫と血筋が父祖から子孫へと一直線につながる系統。
※貧乏物語(1916)〈河上肇〉五「併し之が果して今日の人間の直系の祖先に当るものか否かについては議論があるが」
② 師弟などの関係で、直接に系統を受け継ぐこと。また、その人。
※東京の三十年(1917)〈田山花袋〉卯の花の垣「桂園の直系、香川景恒の門下で」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
共産主義者の河上肇が仮に「直系=父系」という意味で使っていたとしても、それが本来の用例化は大いに疑問がある。それどころか、そもそもここに引用されている「今日の人間の直系の祖先に当るものか否か」という文章の「直系」を「父系」と解釈するのも無理があるように思う。
辞書編纂者は適当な出典があればそれを用いるはずで、「直系=父系」を示す適当な出典が無かったのではないか。
手元の『古語辞典』にも「直系」という用語は無かった。古典以来の用法だと言うのは無理がある。
無論、辞書に載っていなくても古典で使われている可能性はゼロでは無いので、東京大学史料編纂所のデータベースでも検索を書けたが、奈良時代から江戸時代までの文書が収録されているそのデータベースにも出てこなかった。
データベースに載っている文書は全体から見れば氷山の一角だ、と言われるかもしれないが、私が言いたいのは近世以前において「直系」と言う言葉は一般的では無かったのではないか、という事である。そうだとすると「直系」は主として近代以降の用例となるからだ。
そして、近代以降の意味であると「直系」に母系も含まれていた可能性が高いだろう。
谷口雅春先生が父系継承に拘っていたならば、自身の家が母系で継承されていたことを否定的に記されているはずであるが、そのようなことは一切ない。
かつて四宮正貴氏が谷口雅春先生から谷口清超先生への法灯継承についてブログで「谷口雅春先生のこの論議を敷衍すれば、谷口雅春先生は、「男系による皇位継承でなければ皇統は断絶する」とは考へてをられなかったといふことになる」と、否定的に評価していたので、私は当時主催していた政治団体内部で四宮氏の主張について「四宮先生を始め生長の家系の一部の人間は雅春先生が女系天皇を否定していないことを承知しておきながら、勝手に「男系絶対」へと「教義改竄」を行っている」と論断したことがある。
谷口雅春先生の祖先も母系で谷口家を繋いできたのであるから、谷口清超先生が婿に入ることに何の障壁も無かったのである。そのような家の人間が「直系=父系」と言う意味で使うとは、考えにくい。
まぁ、私の調査力不足もあるかもしれないので、どなたか出典があれば教えてくださると幸いである。