【私見】夫婦別氏よりも夫婦別籍の議論を先にしてはどうか
生長の家の「選択的夫婦別姓」に関する見解をよく聞かれるのですが、生長の家はこの問題について公式な声明を出していませんし、また、そもそも「選択的夫婦別姓」と言う言葉自体の定義が曖昧ですので、どのような内容であるかによって信徒の対応も異なってくると思います。
そもそも今の法律で「姓」は存在しません。今の法律では「名字」を「氏」としているため、婚姻届けを始め公式な書類は全て「姓」ではなく「氏」となっています。「名字」を「姓」とするのは江戸時代からある誤用です。
元々「姓」も「氏」もどちらも「藤原朝臣」や「源朝臣」と言った氏族名であり、一方で「名字」は「近衛」や「徳川」と言った家名でした。それが江戸時代になると本来の意味での「姓」(氏族名)を使うことはあまりなくなり、一般には「名字」(家名)を「姓」や「氏」とする誤用が広まっていました。そのため本来の意味での「姓」(氏族名)は特に「本姓」と呼ばれるようになりました。
そこへ大鉈を振るったのが明治政府です。
明治政府は「姓=本姓(氏族名)」「氏=名字(家名)」として区別したのです。
私で言うと「姓」(本姓)は「藤原朝臣」であり、「氏」(名字)が「日野」です。
この本来の意味の「本姓」としての「姓」は昔から「夫婦別姓」です。今問題となっているのは「名字」としての「氏」をどうするのか、ですから「夫婦別氏」の方が正確な表記です。
そして、この「夫婦別氏」についても現在永田町で議論されているのは2案あります。
A案:「同一戸籍別氏」案
・夫婦が同じ戸籍であるが、戸籍上の氏が夫婦でそれぞれ異なる。
・子供の氏についてどうするかはこの案の中でも議論がある。
B案:「婚前氏続称」案
・夫婦が同じ戸籍で戸籍上も同じ氏だが、改氏した方が結婚前の氏を名乗れる。
・結婚前の氏を名乗る際には全身分証明書を戸籍上とは異なる氏で統一する。
あくまでも私個人の意見ですが、どちらにも問題があるように思います。
誤解の無いように言いますが、夫婦が別の氏であること自体は何ら問題がありません。現に国際結婚では夫婦別氏ですが、それについて誰も反対している人はいません。
それではどうして世論調査でも夫婦別氏に反対する意見が一定数を占めているのか、というと、例えばA案の場合は「同じ戸籍なのに別の氏」となる訳ですね。つまり、「同一戸籍同氏の原則」を破壊すると言うことです。
「同一戸籍同氏の原則」が破壊されると言うことは、これは「別氏をしたいカップルによる選択制であるから、同氏で結婚している人は無関係」と言う訳には、いきません。「氏(名字)は家名ではない」と言うことになってしまいますから、全国民に影響があります。
またB案では身分証明書と戸籍上の名字が異なる訳ですが、それはそれで混乱が起きないのか、と私は思います。
そこで、私は素朴に「そもそもなんで夫婦同籍が前提なの?夫婦別籍でもいいんじゃないの?」という疑問を抱いた訳です。
そこから私が提案しているのが「婚姻制度選択制」です。
さて、この私の提案である「夫婦別籍」ですが、生長の家の教義的にはどうなのか、私も教団から何も声明が出ていない以上断言はできないのですが、ある日ふと重要なことを思い出しました。
「そういや、谷口雅春先生の養親も夫婦別籍じゃないか!」
私の記憶違いが合ってはいけないので念の為に教団資料で確認しましたが、だいたい次のような経緯がありました。
谷口雅春先生の曽祖父に谷口重兵衛と言う方がおられました。この「重兵衛」というのは通称で、実名は不明です。
その谷口重兵衛さんの長女が谷口しま様で長男が谷口福松先生です。谷口福松先生は黒住教の宗教家となりました。
そして家を継いだのは姉の谷口しま様の方でした。谷口しま様は夫を婿に貰い、その夫が谷口重兵衛を襲名します。この段階では形式的には婿養子の旦那さんが戸主であったと思われます。
が、問題はその次です。
谷口しま様の子供は5人生まれ、長男が谷口重兵衛を襲名しました。ならば長男がそのまま戸主となるのが普通です。
ところが、谷口しま様は長男でもなく、また次男の谷口音吉様でもなく、さらに長女の谷口まさでもなく、次女の谷口きぬ様を戸主としたのです。
谷口雅春先生は谷口音吉様の子として生まれたのですが、ある日、谷口きぬ様が谷口雅春先生を家に連れて帰って自分の養子としてしまいました。実の父母はそれに抗議をされたそうですが、戸主は谷口きぬ様の方であって音吉様の方が兄であるけれども家長は妹なのです。しかも谷口しま様まできぬ様の味方をしたと言うことです。
これだけ聞くと谷口きぬ様が「兄や姉を差し置いて戸主になった上に子供まで貰うとは、とんでもない人だ」と誤解されるかもしれませんが、その谷口きぬ様はとても教育熱心であって、その結果今の生長の家がある訳ですから、谷口しま様の決断は間違っていなかったと言えるでしょう。
家と言うと無条件に男尊女卑なものと曲解する方が世の中にはおられますが、家長が女性であってはいけないと言う理屈はありません。
さて、谷口きぬ様が戸主であると言うことは、問題となるのは結婚です。谷口きぬ様の旦那さんの石津又一郎先生も戸主で、しかも広島の士族の出身であると言いますから、お互い相手の家に入ることはできないのです。
そこでこのお二人がした決断と言うのが、婚姻届を出さない、いわば「事実婚をする」ということでした。これだとどちらも戸主であり続けられる、ということです。
石津又一郎先生と谷口きぬ様のお二人は、夫婦別籍という選択肢が認められていなかったからこそ、事実婚をせざるを得なかったわけです。このように夫婦双方が跡取りと言うケースは、明治時代でも既にあった訳ですから、況してや一人っ子の多い今の日本ではそもそも女の子しか家を継ぐ子供がいないと言うケースも出てきます。そうであるならば、夫婦別籍の議論ももっと進められるべきであると考えます。
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